東京学芸大学 音楽学ゼミ

東京学芸大学・音楽学ゼミの活動内容をお知らせしています。

【論文紹介】「雅楽の視点で捉える「君が代」の音楽的特徴と教育実践の提案」

 先日、当研究室と東京学芸大学附属世田谷中学校との共同研究による論文、

 

雅楽の視点で捉える「君が代」の音楽的特徴と教育実践の提案」

 

の掲載についてお知らせしました。

gakugeiongakugaku.hatenablog.com

この記事では本論文の概要を紹介いたします。

 

 

国歌「君が代」は、これまで歴史や歌詞の解釈について様々に研究がなされてきたところですが、音楽そのものについて語られることは少なく、ことに、その追究は音楽学研究に限られてきました。

 

中でも、雅楽の理論にもとづく「君が代」の音楽的研究は、主として当研究室遠藤 徹の著作物に蓄積があり、今日までの音楽学・音楽教育学において学術的根拠を提示するものとなっています(遠藤 徹「国歌「君が代」旋律の背景」(2005)ほか)。

 

これを受け、東京学芸大学附属世田谷中学校・中内悠介教諭と当研究室との共同研究として、小・中学校等で扱うこととされている国歌「君が代」を、古代から続く日本の伝統音楽の系譜に位置づけ、歌本来に備わる特性をふまえた音楽指導のあり方を検討してきました。

 

旋律等の音楽構造の基盤を雅楽に据えることとなった「君が代」は、世界各国の国歌の中でも、その由来や理論的枠組みを異にし、昨今、「君が代」がその音楽性においても国際的関心を得ているという点も、我が国の国歌をめぐる状況として興味深いものがあります。

 

・「君が代」とはどのような音楽なのか

・その上で「君が代」を学校音楽教育としてどう教えうるのか

 

この問いに向き合い実際に教えることとなる、全国の音楽教員、また教員を志望する教育学部等の音楽学生にとって、今後の授業検討の一助となることを願います。

 

【本論文の構成】

1 はじめに

2 雅楽の視点からみた「君が代

 2.1 国歌「君が代」の成立事情

 2.2 壹越調・律旋について 

 2.3「音振」という概念について 

3 先行研究

4 授業実践

 4.1 授業のねらいと構想

 4.2 小学校第6学年:鑑賞の実践の概要

 4.3 小学校第6学年:鑑賞の実践の成果

 4.4 中学校第2学年:歌唱の実践の概要

 4.5 中学校第2学年:歌唱の実践の成果

5 おわりに

 

以下、太字の部分について紹介します

 

[2.2 壹越調・律旋について]

 「君が代」の音楽の理論基盤となっている壹越調・律旋に関する歴史的経緯等を解説しています。

 以下、本文より。

①唐代中国から伝来した唐楽では、壹越調は呂に分類される固有の調を指し、唐楽には壹越調・律という調は存在しない。

②壹越調・律旋は日本で体系付けられた旋法である。

③律に分類された旋法の五音からなるものは、中世以来和国の旋法とする認識があった。

④律旋のうち壹越(D)を主音とする壹越調・律旋は、雅楽の中でもとりわけ重要な伝承である神楽歌や久米歌に通じるものであり、明治期の保育唱歌でも多用された。

 

[2.3「音振」という概念について]

 今日使用される「旋律」という語は近代以降用いられるようになった術語で、元来古代の歌でそれは「音振(ねぶり)」と称されていました。「音振」とあるように古代の歌は、旋律全体も音の振り(ときに母音を長く引き延ばし、上下に音を揺らしながらゆっくりと進行する)であったと考えられます。「君が代」にも、随所に母音を引きながら音を変える古代の歌の特徴が受け継がれています。本論では、こうした歌の特徴をつかむには、伝統的な雅楽の縦書き譜を用いた指導が有効であることを提唱しています。

 

[4 授業実践]

 音楽科の「君が代」の授業において、伝統的な雅楽の縦書き譜、雅楽器による合奏の音源や映像を用いた鑑賞、雅楽の発声法に着目した歌唱等の指導のアプローチを提示しています。本文には、発声指導の風景や、ピアノでなく実際の雅楽器の伴奏で生徒が「君が代」を歌唱する様子を映像リンクとして掲載しています。

 

 なお、日本音楽教育学会によるオープンアクセス化(J-STAGEへの登載)は発行から1年後となります。本論文掲載誌は、国立国会図書館および全国の大学図書館等にてお読みいただけます。

(山本)