東京学芸大学 音楽学ゼミ

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哀楽喜怒敬愛の声(1) / 楽記読み下し文2

 

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本記事では、漢字の字体は新字体に改めています。

また、別のルビがある場合は傍線を付し、マウスオーバーで読みが表示されます。

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【哀楽喜怒敬愛の声(1)】

 

がくは、おんよりる所なり。*1

其のもと、人の心の物に感ずるに在り。

の故に、其のかなしびの心感ずるときは、

其のこへしじまりて*2以てそが*3

其のたのしみの心感ずるときは、

其のこへゆたかにして以てゆるし。

其のよろこびの心感ずるときは、

其のこへあがりて以てひろが*4

其の怒りの心感ずるときは、

其のこへあらくして以てはげし。

其のうやまひの心感ずるときは、

其のこへなおくして以てかどあり。*5

其のうつくしみ*6の心感ずるときは、

其のこへやはらいで以てやはらかなり。

六つのものは、せいあらざるなり。

物に感じてしかうしてのちに動く。

*1:唐の孔穎達『礼記正義』に、「楽は、音を比するに由て生る、故に音の由て生す所と云ふ」とある。

*2:「しじまる」は「縮まる」の意。

*3:京大清家文庫本は右ルビが「そむく」、左ルビが「そがる」。

*4:京大清家文庫本ほか伝統的な読みでは「あらくす」と読んでいるが、直後の「粗」との相違が読み分けられないため、ここでは福永光司の読みを採用した(福永光司『芸術論集』中国文明選一四、朝日新聞社、一九七一年、一一頁)。 

*5:京大清家文庫本ほか伝統的な読みでは「直にして以て廉なり」と音読みする例も多い。「廉直」の意。

*6:『體源鈔』では「いつくしみ」と読んでいる。